甘藍車(かんらんしゃ)

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その遊園地は海の見える高台の上に忽然と現れた
妹がどうしても行きたいと言うので一緒に行ってみた
「あ、観覧車!」
妹が嬉しそうに走り出した
「そんなにいそ...」
僕は絶句した
それは観覧車のようで観覧車ではなく、キャベツのようでキャベツだった
「あれは」
「あれは甘藍車です。ちなみに甘藍とはキャベツのことですが」と言ったのは兎だった

うわっ、兎が立って喋ってる!

「乗ってみますか?」と兎
「はい!」と妹が元気よくキャベツの中に乗り込んだ
僕も仕方なく妹の横に座ると「食べちゃダメですよ」と兎が笑いながら葉の扉を閉めた
甘藍車が地上を離れて行く
妹が「うわー」と歓声を上げた
甘藍車はぐんぐんと上がり、綿菓子みたいな雲を突き抜け、宇宙まで昇った
「あ、月」妹が指差した
甘藍車が次々に月へと下りていく
月で沢山の兎たちがキャベツの到着を心待ちにしているなんてこの時の僕らはまだ知る由もなかった
ファンタジー
公開:24/04/21 21:28

杉野圭志

元・松山帖句です。

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