遊園地の化石

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理科のフィールドワークで遊園地の化石を見付けた。
大きさは僕の掌くらい。カタツムリみたいな巻き貝で、うずまき型のレールにはジェットコースターの車輪の跡があった。
「遊生代のアミューズナイトだね。断面を観察してみよう」
先生が古いチケットで殻のふちをこすると、ぱちんと入園ゲートが外れ、アミューズメントパークが開園した。

子供用のメロディペットから観覧車まで、殻の中には遊具がらせん状に詰まっていた。
メリーゴーランド。コーヒーカップ。バイキング。僕が乗るには小さいので、指を乗せて遊ぶ。奥から出て来たコースターも、昔の車輪の跡を追ってうずまきのレールを走り始めた。
「どれも楽しそうなのに、みんな絶滅しちゃったんですね」
「楽しいものがあり過ぎた時代だったからね」
先生は少し淋しそうに笑って、ゲートを閉じたアミューズナイトを僕の耳に当てた。
にぎやかな音楽とお客さんの声が、波音の様に遠く響いた。
SF
公開:24/04/21 20:10
プチコン5~遊園地

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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