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私が働き始めたスーパーには、春の大売り出しというものがある。毎年初日に『風人さん』が手伝いに来てくれるらしいのだが、朝礼で紹介された彼を見て私は戸惑いを隠せなかった。姿を肉眼で捉えられないのだ。
周囲がいつも通りなので平静を装い、先輩のハルミさんにこっそり訊ねた。
「風人さんってどんな方なんですか?」
「あら、まさか一目惚れ? わかるわぁ、彼、素敵だものねぇ」
「あ、ああ、そうですね……」
まさかとは思うが、見えないのは私だけなのだろうか。
外には既に開店待ちのお客様が行列を成していて、誘導の店員が数人出動している。扉が開くなり、なだれ込むようにお客様が入ってくると、休む間もなくあちこち駆り出された。目も回る忙しさだった。
夕方になり、帰宅するため店を出ると、あたたかい風が私の頬を撫でるように通り過ぎた。風人さんの正体に気づいたとき、こみ上げてくる笑いをこらえられなかった。
周囲がいつも通りなので平静を装い、先輩のハルミさんにこっそり訊ねた。
「風人さんってどんな方なんですか?」
「あら、まさか一目惚れ? わかるわぁ、彼、素敵だものねぇ」
「あ、ああ、そうですね……」
まさかとは思うが、見えないのは私だけなのだろうか。
外には既に開店待ちのお客様が行列を成していて、誘導の店員が数人出動している。扉が開くなり、なだれ込むようにお客様が入ってくると、休む間もなくあちこち駆り出された。目も回る忙しさだった。
夕方になり、帰宅するため店を出ると、あたたかい風が私の頬を撫でるように通り過ぎた。風人さんの正体に気づいたとき、こみ上げてくる笑いをこらえられなかった。
ファンタジー
公開:24/04/22 19:34
更新:24/05/05 19:27
更新:24/05/05 19:27
春一番
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
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