遊園地と引っ越し

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「遊園地の引っ越しは全て完了しました」
園長の話しに、僕達は拍手した。
「後はスタッフの皆さんだけです」
みんな困ったように顔を見合わせた。
「遊園地と一緒に引っ越したい人だけお願いします」
話しを聞いていた一人が手を挙げた。
「引っ越した場合、戻って来られますか?」
「それは…、残念ながら無理です」
その言葉でみんな一斉にざわざわとし始めた。

遊園地にもデジタル化の波が押し寄せた。
手元のスマートフォンにはデジタル化した、バーチャル遊園地が表示されている。
そこには僕の働いていた遊園地が寸分違わず画面に表示されていた。
引っ掻き傷やペンキの色合いさえも。
僕はあの遊園地が大好きだった。
だけど一緒に行く勇気がなくて、辞表を出してしまった。
スマートフォンには、デジタル世界に引っ越した園長とスタッフ達が、
キャラクターになって、忙しそうに遊園地の中を走り回っているのが見えた。
ファンタジー
公開:24/04/21 23:26
更新:24/04/21 23:43

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