真ノ名

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『ホラ、言ったでしょ? 稀に神が釣れるってさ』
「えっ、おどけて言ったんじゃないの……!?」
隣で愉快そうに笑っているピエロに私は声を荒らげる。
『まぁまぁ落ち着きナよ。これが成功したら礼は弾むよ?』

廃墟遊園地に突然現れた神を目の前に、どう落ち着けというのだ。神を相手に名を呼び起こしたことがないというのに。だけど、やるしかなさそうだ。覚悟を決めるしかない。
私は目を閉じ、深く呼吸する。対象の魂の位置と輪郭を探るために。しかしすぐに気取られてしまったようで、分厚い咆哮の圧が私を潰しにかかる。ピエロはなにかを叫んでいるが、動じず、冷静に

「――鎮まれ」

私はゆっくりと目を開け、神の魂を見据える。そして、真名――命そのものである本来の名を捉える。真名を暴くということは相手を掌握したのと同義。
たとえ神であろうと私に隠し事はできない。

「名を忘れた神よ。貴方の名を、よみがえり申そう――」
ファンタジー
公開:24/04/20 19:34
更新:24/04/20 19:43

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