私が遊園地に行くのは楽しむためじゃない

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 私は一人で遊園地に入った。
 童心を思い出している場合じゃない。小学生時代に楽しんだメリーゴーランドやジェットコースター、まんまるとした愛嬌のあるキャラクターなどが自然と脳裏に浮かぶものの、私はそれを感情に出さない。

 遊園地へ入ったのは仕事のためだ。従業員としてのアルバイトか、と思う人もいるだろう。だがこの日は休業中。仮に私が従業員だったとしても、ここに来るのはよほどの事情があるからだ。実際にこの遊園地にはよほどの事情があった。だから私が行かなければいけないのだ。

 メリーゴーランドの前に着いた。小学生時代に乗ったときと変わらないが、そこに構っている場合じゃない。

 懐からスマートフォンを取り出す。撮るのは、ひとつの横たわった体だ。その周りでせわしなく動くのは、事件の捜査に関わる人たちだ。一人の鑑識官が私に話しかける。

「刑事、被害者は25歳男性、この遊園地の従業員で……」
ミステリー・推理
公開:24/04/21 17:15
更新:24/04/21 17:14

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