3
4

その木製のメリーゴーランドは、老朽化から解体されることが決まっていました。
本体に使われている特殊な木材は、地球のある時期に奇跡的に群生していたもので、同じ条件が新たに発生したとしても、成長に千年はかかるからです。
「あれ?ここ濡れてるな」メリーゴーランドの専用キャストは、引退が決まってからというもの、運営を終えた夜に限って、一番人気の木馬の背に一粒の水滴が落ちていることに気がつきました。それは、毎晩続きました。
念のため水滴の成分を調べると、何と『涙』だということが分かりました。
「そうか、そんなに悲しいのか……」
それから千年の時が流れました。今、あのメリーゴーランドはお客さんをたくさん乗せて、今日も元気に回っています。当時、メリーゴーランドの涙が話題になり、保護と修復が決定したのです。
あの涙の成分も、実は悲しみの涙ではなく、惜しむ声に感動した喜びの涙だったことが分かっています。
ファンタジー
公開:24/04/21 11:44
更新:24/04/21 21:43
プチコン5~遊園地

二森 ちる

※再設定しました

二森 ちる (ふたもり ちる) と申します。投稿再開しました!

最近の受賞歴は

●第25回「創作童話・絵本・デジタル絵本コンテスト」創作童話部門(2024)
 岩崎書店賞「バスのまどから見えたのは」

●第4回「スマイル童話賞」(2024)
 入賞「ネコさまのいない世界なんて!」


二森 ちる➡童話・児童文学
鬼頭 ちる➡怪談・小説   で筆名を使い分けています。

Xは tilukitoh2_3
キジ白猫をこよなく愛しています。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容