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 春になると、道端に風車がよく生えている。
 カラカラと陽気な音を立てて回っている風車を見ていると、なんだかこちらまで楽しい気持ちになってくるものだ。
 風車は手に触れようとすると逃げてしまう。風の精霊たちが遊び半分でこさえた風車だから、意思を持っているのだ。
 時にはなついて、自ら手に飛び込んでくる風車もいる。カラカラという音が、小動物の鳴き声に聞こえるのは、そんな時だ。
 運よく捕まえたり、自分から飛び込んできた風車は、家に持ち帰って、庭に差しておく。
 魔女の間では、春の風車を庭に差しておくと、その年の運が上向くと言われている。それこそ迷信の類なのだが、験担ぎに私もついついやってしまう。
 風車は春一杯まで元気に回っているのだが、夏直前になると枯れてしまう。
 紫色に変色して立ち枯れた風車は、春の終わりを感じさせて、とても物悲しい。
ファンタジー
公開:24/04/19 07:49
春の季語

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