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引っ越した先は曇ガラスだった。
ガラリと開けて気持ち程度のバルコニーに出る。

「透明なガラスだったら良かったのに。」

安い物件は隣接した建物と向き合っていて、あえて自分でくもりガラスシートを貼る事もあるが、ここは前は道なのでそこまで隣が気になる訳じゃない。
どうしてくもりガラスなのだろう?
日差しが強すぎるのだろうか?

でもそれもすぐに慣れた。
私は厚手のカーテンだけを下げ殆ど使わずにいた。

ある日、飲み会があって終電で帰った。
ほろ酔い気分で鼻歌を歌いながら真っ暗な部屋に入っていき、パチリ、と電気をつけた。

「……ッ!!」

ぱっと明るくなったその一瞬、窓に顔が見えた。

私は動けなくなった。
持っていた鞄が手から落ちる。
暫くそのまま動けず立ち尽くした。

ただの顔じゃない。
窓にみっちりと張り付いた巨大な顔が、部屋の中を血眼で覗いていた。

窓は、くもりガラスじゃなかった。
ホラー
公開:24/04/18 23:58
更新:24/04/19 00:41
怖い 意味がわかると怖い話

ぽんず

ぽんずとかねぎとか薬味と調味料。
(整理したSSはNovelDaysにあります)
http://lit.link/misonegi

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