ご乗車ありがとうございます

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「皆さま、本日はご乗車いただき誠にありがとうございます」

軽快なアナウンスとは裏腹に重くゆっくりと坂道を上がっていき、そして息つく間もなく上下に激しく蛇行を繰り返した。

お陰で乗り物酔いをしてしまったが、目の前のお化け屋敷を見てすぐに酔いは覚めた。

窓ガラスは無造作に割られ、至るところにクモの巣が張り巡らされている。

中に入るなんて到底無理なので、目をつぶって通り過ぎた。

お腹が空いてきたのでお菓子を食べてコーヒーを飲もうとしたら、カップを落としてしまいクルクルと回っていた。

そうこうしているうちにまた坂道を上がっていたが、先ほどとは違い穏やかな平坦な道を確かめるように進んでいく。

そして頂上までたどり着き、見えた景色は…目的地の遊園地だった。

「皆さま、長らくのご乗車お疲れさまでした」

アナウンスの後、バスは静かに停車した。
その他
公開:24/04/20 09:23

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