蛙の目借り時

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 春は蛙の目借り時などという。
 春になり、暖まって来ると睡魔に襲われることがある。これを、蛙が人の目を借りているからだと言い慣わしているのである。
 実際、私のところにも春になると蛙から目を借りたいという申し出がくる。こちらは比喩ではなく、本当に目を借りにくる。
 御丁寧に手形で記された若葉仕立ての手紙を送ってきて、富山の蜃気楼がみたいとか、年に一度の蛙の茶会に出席したいとか、色々なことを言ってくる。
 全部に応えていたら、私は春中眠り続けなくてはいけないので、対応するのは一つか多くて二つまで。一番面白い用件で目を借りる蛙を独断と偏見で選んで、目を貸している。
 今年は、池の底の発掘調査に加わる蛙のために目を貸して、当日は一日中寝ていた。
 一日経って目が覚めると、若葉仕立てのお礼の手紙と、出土遺物だという小さな可愛らしい蛙型の石が枕元に置かれていた。
ファンタジー
公開:24/04/20 09:14
春の季語

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