またね

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昔の丁稚奉公は年に二回、盆暮しか家に帰れなかったそうだ。奉公の厳しさを伝える話なのだが、
「年に二回も帰れたのか、いいよね」
馬車が呟く。

僕たちが働く遊園地では年に一度、一週間の休園日がある。唯一、家族の元に帰れる日だ。
休園日の前夜、すべての客が去った後に僕たちは移動を始める。
メリーゴーランドに係員がやってきて、僕に付けられている器具を外す。
「君の家まではどのくらいかかるの?」
実家の牧場は北海道にある。今夜は天気がいいし風も弱い。空を翔るにはうってつけだ。
「2時間もあれば」
帰ったら、妹と走り回ろう。飼葉も沢山食べて。戻ってくるのが嫌になるかな?
休暇の最終日、家族と交わす「またね」が辛い。

そういえば、今日の最後の客。5歳くらいの子。
「またね、また再来週ね」
何度も手を振っていた。
ここには心躍る「またね」がある。
やっぱり戻ってこなくちゃ。

またね

うん、またね。
その他
公開:24/04/19 16:39
プチコン5〜遊園地〜

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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