遊具は走る

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 戦争が終わった。日本は負けた。この遊園地も爆撃でボロボロになり、遊具は使えなくなったものばかりだ。戦争前のにぎやかな光景は見る影もない。これまでの我が園の功績も全てなくなってしまった。
 焼け跡を掃除する気力もなく、一人園内で佇んでいると、どこからか声が聞こえた。

「疎開しててこっちにいなかったんだ。早く遊びたいなぁ」

 小さな男の子だった。よく父親と一緒にウチに遊びに来てた子だ。
 僕は門を開けた。

「お金はいらないよ。前みたいな遊具もないんだ。その代わりこっちにおいで。」

 裏の倉庫に連れて行き、リアカーの後ろにその子を乗せた。僕はリアカーを持ち走り出した。

「うわー、すごい速いや!楽しい!」

 久しぶりに子どもの笑顔を見れた。これまでじゃない、ここからだ。遊具になった僕は、そんなことを考えながら走り続けた。
その他
公開:24/04/19 16:04
更新:24/04/19 16:06

弟子鈴

でしべる、です。不定期にショートショートを書いています。
ショートショート初心者ですが、精一杯書いてますので、読んでいただけたら嬉しい限りです。

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