蝶

　夜にフラッと外へ出たら、青白く光るものが飛んでいる。よく見れば、それは小さな蝶なのだった。
　翅が蒼白く輝き、それが灯のようにポツポツと浮かんでいる様は、とても美しい。
　月光蝶だとすぐに分かった。夜行性で翅が蒼白く輝く蝶なんて、月光蝶くらいのものだ。
　右の人差し指を夜闇の中に突き出すと、二匹の月光蝶がとまった。ごめんよといいながら、優しく羽を撫でれば、青白い鱗粉が取れた。嗅ぐと、ハーブのような匂いがする。
　友人の薬草屋が、月光蝶の翅を使った匂い袋を売っていたことがある。その時に、嗅がせてもらった匂いと全く同じだった。
　シモリンも匂い袋とか作りなよと誘われたのだが、私はどうも虫や動物を殺してなにかを作るのが苦手だ。だから、あの時は断った。
　月光蝶はしばらく私の指で休むと、再び夜闇の中へと去っていった。鱗粉がサラサラと流れるさまは、どこか天の川にも似ていた。