最後の思い出

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気がついたら遊園地にいた。
身体が軽くてウキウキする。
遊園地なんて何年ぶりだろう。そうだ、子供たちが小さい頃に連れて行って以来だ。
観覧車は、相席だった。老婆と少年。
少年は、こんなのに乗りたかったと外を見てはしゃぎ、老婆は、自分の子どもの昔語りをして楽しそうだ。
メリーゴーランド。バイキング。子供に帰ったように楽しんだ。
「いよいよ、最後です。乗り物を選んでください」
場内放送に従って、ジェットコースターに乗り込んだ。カタカタカタとゆっくり上昇して、一気に下降する。ぐるぐると回転して、上昇したところでレールを離れて空へと飛び出した。
空中を螺旋状に走る軌跡の内側の空間には、メリーゴーランドから離れた馬に乗る壮年や、観覧車から飛び出したゴンドラに乗る老人がキラキラした目で周りを眺めている。
神様の粋な計らいに笑みを浮かべる。
誰だよ、あの世への入り口は、三途の川だなんて、嘘を言ったのは。
公開:24/04/17 05:34

氷堂出雲( 島根県 )

詳しくは
https://lit.link/HyodoIzumo

・ソニーミュージックのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。
・第20回光文社ショートショートYomeba!で優秀作
・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年)
・ショートショートnote杯GetNaviWeb賞受賞。
・第21回島根県民文化祭文芸公募 散文の部銀賞。

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