ワルツと共に

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陣痛の間隔が短くなるにつれリズムを取るように身体が三拍子に揺れた。そんななか無音のはずの分娩室に微かにだが軽やかなワルツが響いてくる錯覚を抱いた。私は痛みに耐えながらもなんとか言葉を口にした。
「先生、この曲はいったいどこから……」
「あなたのお腹の中からですよ」
先生は施術の手を止めることなくそう告げた。
赤ちゃんの頭が少し出てきた辺りでその音はより高らかに分娩室に響き渡りはじめた。
「はぁはぁ、うーん……」
そうして無事に産まれてきた子は元気な産声を上げた。
『ヒヒーン!!』
!?
「おめでとうございます。元気な遊園地ですね」
「ゆうえん……ち?」
「メリーゴーランドのお馬さんですよ。先ほどから流れているワルツはこの子の誕生を祝福して神様が」
何を言っているのか意味が解らなかったが、私は本能的に我が子の身体を丁寧に舐めた。すると再び元気に嘶き、リズムに乗るように身体を揺らしはじめた。
ファンタジー
公開:24/04/17 01:07
更新:24/04/17 12:18

ことのは もも。( 日本 関西 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていこうと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

カントー地方在住
 

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