ジットコースター

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彼が空にぐるりと円を描いている線路を指差した。

「俺、あれ乗りたい!」

コースター系は苦手と言ってるのに、こういう所が彼とは合わない。

すると、彼は初心者向けという【ジットコースター】をすすめてきた。渋々二人で近未来風の座席に座った。出発してもコースターは一切動かず、疾走感を疑似体験するための風が吹いてくる。

「終了になります!」

これなら怖くない。私は興奮気味でコースターを降りた。

「じゃあ、俺はあれ一人で乗ってくるわ」

彼は別のコースターの入口へ走っていった。

ソフトクリームを食べながら彼を待ったが、なかなか帰ってこない。

「うひょー」

コースターが近くを通り過ぎる度に彼は嬉しそうに叫ぶ。気になったのは彼の後ろに座っている人の顔が恐怖で骸骨のように見えた。

ふと、コースターの看板を見た。

【ズットコースター】

あれが五年前の事だ。

彼はまだ戻ってこない。
その他
公開:24/04/14 15:05
更新:24/04/21 16:11

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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