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騒音機という家電が発売された。
見た目は小さなラジオ。定時に流行りの話題を提供したり、置き場の雰囲気に合った音楽を流してくれる。限定販売された一号機は、新しもの好きや静寂が苦手な人々のあいだで大人気となり、まもなく完売した。
予期せぬ大成功により特別ボーナスを付与した企業だったが、社長は頑として増産の指示をださなかった。しびれを切らした幹部は開発チームを促して二号機を設計し、工場を稼働させた。
やがて試作品が完成。幹部は社長の前で熱弁をふるった。
「最新のAIを搭載し、持ち主の声を代弁させることが可能になりました。どうぞお聞きください」
幹部の一人が電源を入れると、騒音機二号は威勢良く叫んだ。
「おい、このうすらトンカチ! さっさと販売を承認しろ! 給与を上げろ!」
「なるほど。それが君たちの本音かね」
にこにこしている社長と、青ざめる幹部。会議室にはベートーヴェンの『運命』が流れた。
SF
公開:24/04/14 15:04
更新:24/04/15 02:56

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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