チョコレートの種

「お母さん、チョコの中から種が出てきた！」
そう言って興奮する子供の手を見ると、何かがぎゅっと握られている。
「あのねあのね、お母さんから貰ったチョコ食べてたら、中でちょっと固いのがあって、出したら種だったの！」要約すると、先程私がこの子にあげたアーモンドチョコのアーモンドを何かの種だと勘違いしているらしい。
「ねえねえ、これ育てたらチョコが出来るの？育てたい！」
お願い、とせがむ我が子に、私は頷くしかなかった。
休日の昼下がり、私達はベランダで種を植える準備をしていた。埋める前に、私は種を手に取りちちんぷいぷいと魔法をかける。
「育つかなあ」子供は不安そうに目を伏せる。
「大丈夫よ」私は力強く言った。「私は魔法使いだから」
それからあの種はすくすく育ち、立派にチョコレートが実るようになった。子供は大喜びで毎日採って食べている。アーモンドからチョコが実ったのは、魔法のおかげということで。