遊園島

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海の彼方から、潮騒に混じって音楽が聞こえてくる。

今年は遊園島が来るぞ。浜の観測所のおじいが言った。
数年に一度、満月の晩に流れ着く遊園島は、大きな浮島に建つ漂流遊園地だ。いつ誰が作り、どうやって動かしているかは知れないけれど、海と砂と船しかない、過疎地の漁村には何よりの娯楽だった。

大潮に乗って遊園島が顔を出すと、満月の引いた銀の道は歩いて渡れる月洲になる。
大人も子供も、月の出と共に裸足で月洲を渡り、遊園島でひとしきり遊ぶと、月の入りと共に浜へ帰ってくる。
遊園島で何の遊具に乗り、どんな風に遊んだのか、帰った時には忘れているけれど、皆楽しかったね、また来ようねと笑って家路に着く。


水平線を太陽が金色に染める頃、浜に残された大勢の足跡はさざ波の様に音楽を奏で始め、それぞれが楽しい思い出を乗せた小さな浮島遊園地になって、引き潮の海へ歩き出して行く。
そうしてまた、この浜へ流れ着く。
ミステリー・推理
公開:24/04/13 20:30
プチコン5~遊園地

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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