盗塁王になる

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中学の同級生、橋本たかし君は、野球部だった。
たかし君は、打撃が秀でているわけでもなかったが、足の速さには自信があった。
「僕は、プロ野球選手になって、盗塁王になるのが夢なんだ」
たかし君は、みんなによく言っていた。
僕とたかし君は違う高校に進んだが、彼が野球部に入ったと噂を聞いた。
たかし君、がんばれ。僕は心の中で応援をした。

高校を卒業して何年か経ったが、たかし君がプロになったという話は聞かなかった。
プロ野球選手になる夢は、果たすことができなかったのだと思った。

ある朝、新聞を広げると小さな記事が目に入った。

〈窃盗の疑いで逮捕、25歳会社員〉の見出しに目が留まる。
〈野球グラウンドのホームベースを盗んだ疑いで橋本たかし容疑者を現行犯逮捕。
容疑屋のアパートで、数十枚のホームベースが発見される〉

たかし君、盗塁王になる夢は実現することができたんだね。
僕は新聞紙を閉じる。
青春
公開:24/04/13 15:23

もりを

物語をひねり出すのは大変だけど、400文字という制限のなかで、あれこれと言葉を考えるのが楽しいです!

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