想を編む

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高齢者と呼ばれる年齢になった。
離婚して、今はひとり住まい。
面白味のない人生だったな。
甥や姪に迷惑をかけたくないし、終活でもはじめようか。

押入れから手編みのセーターが出てきた。
捨てるのは勿体ない。
ほどいて靴下にでも編み直そう。

セーターを数センチほどく。
すると、目の前に幼い日の光景が浮かんだ。
小学校の入学式。両親と一緒に写真を撮った。
満面の笑顔の私。

また、数センチほどく。
今度は、中学校。部活の仲間と合宿。
厳しくて辛かったが、今でも、年に一度は会う間柄だ。

さらに、数センチ。
高校生活、はじめての彼氏ができた。
毎日が新鮮で楽しかった。

床のうえに、ほどいた毛糸の山ができていく。
なんだか、私の人生も捨てたもんじゃなかったな。

ピンポーン。
「おばさん、久しぶり」
「あれ、眠っているのかな」
「なんだか、笑っているよ。楽しい夢でも見ているのかな」
ファンタジー
公開:24/04/15 17:53
更新:24/04/16 07:15

もりを

400文字という制限のなかで、あれこれと言葉を考えるのが楽しいです!

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