ボタンを押して

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「おい、おまえ。ボタンを押してくれ」
 小学生だった僕は、閉園して廃墟となった遊園地にいた。伸び放題の木々。恐竜ランドに、紐で吊されたプテラノドンが残っていた。ヤツが大きな羽を広げ、観客の前に降りてくるのは、怖かったよなあ。声はヤツだった。
「俺は帰りたいんだよ」
 不思議と怖くなかった。3DもVRも無いからホンモノを使おうと、太古の昔の空を飛んでいたヤツが捕まえられて園の出し物にされていたのだそうだ。そりゃかわいそうだ。
「だから、そこのボタンを押してくれ」
 言われるまま僕は、茂みをくぐって「×」と書いてあるボタンを押すと、ヤツの背中の紐が外れた。
「ギギャー、ありがとよ。じゃあな」
 ヤツは大きな翼を広げ、その風で僕は倒れそうになった。ヤツは大空に舞い上がると、海へ飛んで行った。
 翌日「空飛ぶプテラノドン」のニュースはどこにも無かった。
 無事に帰れたのかな。今でも気になっている。
ファンタジー
公開:24/04/14 21:12
更新:24/04/18 01:49

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