ほんもの公園

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話題の公園に行った。白く窓のないビル。彼女とロビーで待っているとフロントに呼ばれた。
「ロケーション、シーズンは?」
「高原の林、春でお願いします」
「了解です。時間は?」
「一時間」
「では、いってらっしゃいませ」
ドアが開くとそこは爽やかな林。僕と彼女は足を踏み入れる。白樺の若葉がそよいで鳥が鳴いている。空気が美味しい。
「素敵ね」彼女と手をつないで僕は林の道を歩いた。陽射しがキラキラと気持ちいい。「うまくできている」「ほんと」「あの木も鳥も人工物」「鳥の声は?」「コンピュータ制御だ」「バーチャルじゃないの」「リアルとハイブリッドだ」風はリアル。小石の道もリアルだけれどどこまでも続くのはバーチャルか。「気持ちいいわ」彼女と楽しい会話をしながら起伏の道を歩いて、湖畔を通ったりする。
ドアが見えた。もう時間らしい。
「楽しかったわ」
「では、ここで」
ほんものそっくりの彼女と僕は別れた。
その他
公開:24/04/11 16:28

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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