閑静な住宅愛

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 表札に「遊園地」とあるので賑やかな家族を想像しながらインターホンを押したが、留守みたいなので踵を返す。
「遊園地さん、行方不明なのよ」
 いつの間にか後ろにいた女性に話しかけられて肝を冷やした。
「ど、どうも。昨日引っ越してきた者ですが、この辺の方ですか?」
「私? そうよ。それよりさ。良かったわね、遊園地さんが行方不明で。みんなすぐ引っ越しちゃうから」
「どうしてですか?」
「遊園地さんちがうるさいからよ」
 名は体を表すってことか。
「行方不明なんですか?」
「そう。だからみんな喜んでるのよ。ここだけの話だけどね」
 女性がウインクした。
「警察は?」
「来ないわよ」
 じゃあ、どこかに短期滞在してるだけなのでは。
「他に変わった事とかあるんですか?」
「うるさい子供も次々にいなくなったわ。だからこの辺は本当に静かで良いところよ」
 寒気がした。荷物を解く前に引っ越さねば。
ミステリー・推理
公開:24/04/11 11:31

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