『長』観覧車

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「これ、乗る?」
「わたしはシュン君とならいいよ。怖くないよ」
「怖いか怖くないかじゃなくてさ。本当にいいの?」
「どして?」
「なんか、他のアトラクションが全部中止だからって、消去法で決めるのはよくないっていうか」
「わたしとだから?」
「違うよ。セラちゃんと二人きりだなんて夢みたいだよ」
「お客さん、私たちだけだもんね」
「本当に貸し切り状態。あーあ、他のアトラクションが動いてればなぁ」
「この『長』観覧車しか動いてないよ」
「三年はなぁ……」
「シュンくん内定出たんだもんね」
「うん」
「乗らないなら帰る?」
「いや、あの、えっと」
「わたしと二人っきりで過ごすの、嫌?」
「嫌なわけない、けど」
「けど?」
「ずっと一緒にいたいよ。でも、一周が三年の観覧車っていうのが、ちょっとさ……」
「じゃ、一人でよく考えてきて」
 ドン・バタン
 カチャ
「ミチオ! 三年ぶりね。考えてくれた?」
ファンタジー
公開:24/04/12 22:17
更新:24/04/13 07:56
プチコン5遊園地

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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