逆回転木馬

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 十年分の公営競技の結果をずっしりと抱えて、過去に戻れる遊園地にやって来た。
 回転木馬と観覧車しかない鄙びた小さな遊園地は、夜に突然現れたオーロラのように存在感があって、とても幻想的だった。
 ワクワクする音楽に合わせて回転する木馬の一頭に跨る。
 金持ちになってやり直して、母さんを楽させてやるんだ。母さん、死に目に会えなくて悪かったね。過去に戻っていっぱい親孝行するから……。
 回転木馬が逆回転を始めた。それに合わせて録画した映画を巻き戻しているかのように思い出がよみがえる。これじゃあ、まるで走馬灯じゃないか。

「お客さん、終点なので降りて貰えませんか」
「あれ? 遊園地は?」
「ここは終点の県立病院ですよ」
 母さんが死んだ病院だ。
「今日ってひょっとして20●●年の■月▲日ですか?」
 七年前。母さんが死んだ日だ。運転手がうんざりしたような顔をした。
「当たり前でしょ」
SF
公開:24/04/12 00:41
更新:24/04/14 02:16

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