雨傘　探偵シリーズ③

「Xに動画が拡散されてますよ」

「…ん、催涙弾？」

「そうです。今回の依頼主、香港在住の方で、警察に拘束された友人を助けてほしいそうで…」


よれば、デモに参加した友人が10年経っても未だ戻ってこないという。

私は香港へ渡ることにした。

空港近くの駐車場で、依頼主は探偵を待ち続けていた。


「あなたが日本の探偵ですか？」

「そうですとも」

「香港の探偵はまともに取り合ってくれませんでした。そこであなたにお願いしたいのです」


3日後。

賄賂を受け取った警察から、私は子細を掴んだ。


「CNガス？」

「高濃度の毒が含まれていたようです。ご友人は深圳で後遺症の治療を受けていると判明しました」

「本当ですか！」

「えぇ。ですが…」


私は深呼吸をした。


「催涙弾に当たった者は、皆全ての記憶を失ったようです」


病室に置かれている雨傘は、ガスで黒に変色していた。