ゆうちえん

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『ゆうちえん』。建物の入り口にはクレヨンでそう書いてありました。鉄でできた門に豆電球がいくつか絡ませてあります。

「ぼくらはきっと、だいにんきになるね」
お庭では小さなデミタスカップたちが手を繋いでくるくる回っていました。
「ぼくのほうがだいにんきさ」
隣でプラスチックでできたおもちゃの機関車がぽうと汽笛を鳴らしました。

「早く大きくなりたいね」
帽子を被った男の子が言いました。『えんちょうせんせい』と画用紙の名札に書いてありました。

 数年後、街に新しい遊園地ができました。
 色とりどりのネオンで飾られた正門からはくるくる回るコーヒーカップと煙をあげるジェットコースターが見えました。

「いらっしゃいませ」
帽子を被った男性がお客さまに挨拶をします。
「ようやく『先生』がとれました」
そう言って入場料の千円を受け取りました。
 胸には『園長』と書いた名札がピカピカ光っていました。
ファンタジー
公開:24/04/07 20:02

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