私の生きた街
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私が生きたこの街は今もまだ暗い空で覆われているのだろうか。あの頃に感じていた息苦しさもいつの間にか規則正しい呼吸に変わっていた。私の苦しさは大人にとっての正しさだった。上を見上げれば、大人たちの濁った瞳が私の視界を覆った。どこまで逃げても、トンネルから抜け出すことはできなかった。大人たちが列をなして私を上から覗き込んでいた。逃げることが出来ないと悟った私は走ることを止めた。途端に光が私の足元を照らした。上を見上げると、終わりが見えないような景色が視界一杯に広がっていた。暗い暗い空の下を生きた私は、大人になった。そして、私の足元には上を見上げながら走る子供たちが通り過ぎていく。
その他
公開:24/04/07 09:00
#大人の正しさ
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