きらめくフライパン

「母さんそっくりになったな、恵」
父はそう言って、私の作った料理を食べる。私も料理に口をつける。…うん。母さんの味だ。
去年、空の向こうへと旅立ってしまった母。そんな母に代わって、私は料理を作るようになった。
母が愛用していたフライパン。そこには母の癖がしっかり沁み込んでしまっている。
フライパンとは鏡だ。母が愛用していたフライパンは、おふくろの味を私にも反映される。
ピピッ！とスマホのアラームが鳴る。すぐにZoomを起動させる。
『恵。あなた。元気してる？』
宇宙服に身を包んだ母が画面越しに手を振る。
「元気だよ。こっちは今、ご飯食べているところ」
料理をカメラに近付ける。
『いいなー。母さんも恵の料理が食べたいなー』
羨ましがる母。私と父を置いて、宇宙に行った罰だ。存分に悔しがるといい。
私は母にフライパンを見せた。そこには私と母の顔が映し出されている。
「帰ったら、一緒に作ろうね」