0
4

 かつて人間と呼ばれた生き物たちが手を繋いで歩いている。ふわふわとした足取りの白痴めいたその列を、水辺の動物や森の鳥たちがぼんやり見ていた。その日は気候もぼんやりとして暖かく、湿気の多い小さな湖畔は、薄い霧の膜に覆われて夢の始まりに似た微睡の中にあった。
 その虚ろな生き物たちは、仲間を見つけると手を繋いでは数を増やし列を延ばしている。到底知能が高いとは思えないおよそ無意識に徘徊する生き物たちは、やがて湖に突き当たると進路を変えて湖沿いを歩き始めた。
 そこへ別の生き物たちの列がやって来た。湖に沿って歩く一行に出会うと、手を取り合って共にふわふわと歩き始めた。そのように増殖しながら、遂に列の先頭の生き物と最後尾の生き物が邂逅し、手を繋いだ時、生き物たちの輪ができた。湖を囲みぐるぐると輪になって回る様子は、かつて存在した遊園地という場所の回転木馬のように、浮かれた風情でいつまでも回り続けた。
ファンタジー
公開:24/04/01 10:43
更新:24/04/06 09:16

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容