だいじょうぶ

よりによって4月1日、入社式の日に寝坊。いつもそうだ、私って。大切な時に。ああ、急がなきゃ、早く、早く。
「だいじょうぶ」
「は？」
「だいじょうぶ」
「え？」
こんな時に大丈夫って、誰よ。私はひとり暮らしのはずなんだけど。

そういえば、母によく言われた。「急いては事を仕損じる」って。私、小さい頃からドジであわてんぼだったから。
「だいじょうぶ」
また聞こえた。とにかく、慌てず冷静に対処すれば大丈夫ってことね。わかった。

入社式への遅刻は免れ、大切な１日は無事終わった。

入社式ではけっこう気合を入れられた。夜、プレッシャーに少々弱気になっていると、
「だいじょうぶ」
また聞こえた。そう言われると大丈夫な気がした。

あれから折に触れ「だいじょうぶ」の声は、私を励まし落ち着かせてくれる。
その声の主はいまだにわからないけれど、人生、大概のことは大丈夫なのかもしれないと思うようになった。