家族の一員

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 母はいつも「家族の一員」という言葉を口にする。健太が生まれた時、産院のベッドの上で真っ先に言った言葉がこれだ。
「今日から家族の一員として弟をかわいがってね」
 柴犬のフクをもらってきたときもそうだった。
「かわいい子犬でしょ。今日から家族の一員として仲良くしましょ」
 インコのハナとソラを飼うときもそうだった。
「今日から家族の一員になる二羽のインコよ。ちゃんと世話してね」
 こんな調子だから、うちには家族がどんどん増えていく。夏祭りの縁日で買ってきたミドリガメも、水槽に泳いでいる金魚も、虫かごに入っているカブトムシも、みんな家族だ。あまり家族が増えるので、僕は母に言った。
「家族が多過ぎるんじゃないのかな。これじゃみんなを愛することなんてできないよ」
 母はにっこりと笑ってうなずいた。
 次の日から、僕の部屋にはフクが住むことになった。
その他
公開:24/04/02 20:00

ナラネコ

老後の楽しみに、短いものを時々書いています。

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