味のある顔

私の顔は誰の印象にも残らない。全く味のしない、面白みのない顔だとよく言われる。
私の顔は無味である。だから調味料を加えて、味のある顔にしてみた。
最初は薄い塩顔にするだけでも躊躇した。
一つまみの勇気と塩で私の顔が印象に残った時は感動した。
塩顔を堪能した私は、次に醤油に挑戦した。塩から徐々に醤油へと変えた為か、違和感はあまり感じなかった。
でも、周りから見ると目鼻立ちがくっきりしたように見えるらしい。
調子に乗ってソースを追加した時は失敗した。ソース顔のような堀の深い顔は私に合わなかった。
ケチャップにも挑戦したが、それよりかはマヨネーズ顔の方が私には合っているかな？
私は無味故に自分の顔に沢山の調味料を使ってみた。沢山の味のある顔になってみた。
そうして調味料を混ぜすぎた私の顔は味が壊れてしまい、その不味さに誰も口に出来ないものとなった。
今日も私の顔を見て、皆が目を逸らし、口を噤む。