きらめくフライパン

隣の部屋に住む女性は料理が得意な可愛い人。
彼女からおすそ分けされる料理はとても美味しい。毎日でも食べたい。僕は胃袋と心を掴まれた。
彼女と暮らしたい…彼女の料理だけを食べ続けたい…そんな願いが叶った。
朝起きると、僕は彼女のフライパンになっていた。
彼女は僕の手…持ち手を握ると料理を始める。
もぐもぐ。やっぱり君の作る料理は最高だよ。この料理は僕と君だけのものであってほしい。
だけど君は作った料理を隣に住む男に持って行く。おすそ分け。そんな事しなくていいのに…
元トライアスロンの選手で鉄人って呼ばれていたらしいけど、ケガで引退して以来、焼きが回って錆び付いているじゃないか。
あれが昔の僕？今考えるとゾッとするね。
僕はフライパンになれて本当に良かった。僕は君の為だけに活躍すると誓うよ。
見て、今の僕って人生で一番きらめいているよ！
「あら？このフライパン塗装が剥げてる…買い替えなきゃ」