きらめくフライパン

私は料理があまり得意ではない。だけど、作るのは好きだ。
私の料理の成功率は約７割…失敗する。
両親からも「お願いだから台所に立たないで」と頼まれる始末。私が料理を作ると周りに迷惑をかける。
そんな私に彼は「料理を作って」と頼んでくる。
「君の料理って、３割の成功が滅茶苦茶美味しいんだよ。それを食べられるのなら７割の失敗なんてどうって事ないさ」
彼は笑って私の失敗した料理に手を加える。
「大丈夫大丈夫」
それが彼の口癖。フライパンをきらめかせるとあっという間に作り変えてしまう。
彼は料理が得意だ。だけど面倒臭がってあまり作ろうとはしない。
彼が手を加えれば、私の失敗した料理もちゃんとした料理に早変わり。
とはいえ、彼にもどうにもできない失敗だってある。
彼はそんな料理を前に「これ食べて。凄く不味くなったよ」と笑う。
ああそうか…彼は料理が得意なんじゃなくて、人を笑顔に変えるのが得意なんだ。