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新年度を迎えた最初の日曜日、リバーサイド広場に移動遊園地が来ることはずっと慣例だったというのに、今年はまだ迷子センターしか届いていない。迷子センターの専属職員は「遊具班とは別行動なので」と取り付く島もなく、壁面に悲しそうな顔をした子供たちが描かれたプレハブ小屋を、あっという間に建ててしまった。
「迷子センターなら遊具班のことを調べてください。その方たちが迷子ってことなんですから」と詰め寄ると、職員は、玩具や椅子やお菓子を積み上げていた手を止めて、わたしを見つめた。
「迷子センターの業務は『一緒に待つ』ことだけです。わたしたちはその『待ち時間』にだけ存在するのです、だから」
ふいに周囲が騒がしくなった。移動遊園地のトラックが次々に到着したのだ。
「すみません。今年はなんだか渋滞がひどくって」
責任者がわたしに頭を下げた。さっきまでわたしがいた「迷子センター」は跡形もなくなっていた。
「迷子センターなら遊具班のことを調べてください。その方たちが迷子ってことなんですから」と詰め寄ると、職員は、玩具や椅子やお菓子を積み上げていた手を止めて、わたしを見つめた。
「迷子センターの業務は『一緒に待つ』ことだけです。わたしたちはその『待ち時間』にだけ存在するのです、だから」
ふいに周囲が騒がしくなった。移動遊園地のトラックが次々に到着したのだ。
「すみません。今年はなんだか渋滞がひどくって」
責任者がわたしに頭を下げた。さっきまでわたしがいた「迷子センター」は跡形もなくなっていた。
ファンタジー
公開:24/03/31 10:20
プチコン5遊園地
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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