贄(ニエ)

　夜の遊園地には、決して遊び半分で近づいてはいけない──特にメリーゴーランドには。そもそも僕らは普段から、もっと注意深く耳を澄ませるべきだった。そうすれば、あの賑やかな伴奏や子ども達の笑い声に混じる悲鳴が、きっと聞こえただろうに。
　今、目の前では白馬や子鹿が身を捩って、か細い声で泣いている。考えてもみてほしい。あんなに太い鉄棒で体を串刺しにされているのに、痛くないわけがなかったんだ。その姿を見て、僕らは肝試しに来たことを後悔した──けれど、本当の後悔はここから。突然、動物達が一斉に戦慄き、叫び出した。その視線は夜空の暗黒に注がれている。そこからキィッ…キイィッ……と甲高い声がして──巨大な鳥が舞い降りた。嘴に豚を加えていて、まだ誰も突き刺さっていないポールにそれを縫い止めてゆく。ああ……僕はこの鳥を、この習性を知っている……枝に贄を突き刺す鳥、名前は確か──……キィッ！　キイィッ！