遊具の宴は、桜の下に

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春夜に揺れる桜並木。濃紺の空を舞う薄桃の花弁の中、藤色の狩衣をさらりと着こなし、涼やかに月を流し見る男が一人。降りしきる柔らかな花弁を額にかざした黄金の扇でゆっくり払い、地に不思議な模様を描く。

「さぁ、宴を始めよう…」

静かに手を合わせ、何かをぶつぶつ唱えると模様が光り出す。男は数枚のお札を取り出すと流れるように夜空へ放つ。宙を舞うお札からは、観覧車や回転木馬といった遊具の式神が召喚されて、あっという間に雅な遊宴地が完成した。楽し気な光と音に誘われたのは妖達。桜の満開になる頃は妖達が活気づき、人に悪さをすることが増える。現代の陰陽師は、こうして桜の下に遊具の宴を催すことで、妖達の邪気を浄化し人々を守っている。回転木馬ではしゃぐ子鬼、お化け屋敷に慄く小豆洗い、人魂の乗る観覧車…。

妖艶な笑みで宴を眺める男。
その口元を隠す扇に描かれた妖達も、パレードのような百鬼夜行で騒ぎ始める。
ファンタジー
公開:24/03/26 20:25
更新:24/04/02 21:06
来たれ、遊具の式神よ 遊園地

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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