遊具の宴は、桜の下に

6
5

春夜に揺れる桜並木。濃紺の空を舞う薄桃の花弁の中、藤色の狩衣をさらりと着こなし、涼やかに月を流し見る男が一人。降りしきる柔らかな花弁を額にかざした黄金の扇でゆっくり払い、地に不思議な模様を描く。

「さぁ、宴を始めよう…」

静かに手を合わせ、何かをぶつぶつ唱えると模様が光り出す。男は数枚のお札を取り出すと流れるように夜空へ放つ。宙を舞うお札からは、観覧車や回転木馬といった遊具の式神が召喚されて、あっという間に雅な遊宴地が完成した。楽し気な光と音に誘われたのは妖達。桜の満開になる頃は妖達が活気づき、人に悪さをすることが増える。現代の陰陽師は、こうして桜の下に遊具の宴を催すことで、妖達の邪気を浄化し人々を守っている。回転木馬ではしゃぐ子鬼、お化け屋敷に慄く小豆洗い、人魂の乗る観覧車…。

妖艶な笑みで宴を眺める男。
その口元を隠す扇に描かれた妖達も、パレードのような百鬼夜行で騒ぎ始める。
ファンタジー
公開:24/03/26 20:25
更新:24/04/02 21:06
来たれ、遊具の式神よ 遊園地

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 風の向くまま )

お立ち寄りいただきありがとうございます。

元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。

物語を読んでくださったうちのどなたか一人にでも笑顔になってもらえたらいいなぁと思いながら書いていたりしますので、気軽に寄り道していってくださいな。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容