大きな池がありました

山麓の村に移住した私は引っ越し先の片付けを終えると村を散策した。集落の道が縦横に入り組んで迷った。向こうから人が歩いて来るし自転車も来る。この道を行けばどこかに出るだろうとそのまま進むと、木々の茂みが開けた。大きな池がある。水を湛えた池は暗い。黒い水面といってもよい。池の周りから草を分けて人が登って来る。池のなかから濡れもせずに人や自転車が出て来る。足元の草むらには細い道がある。道を池に向かって下ってみた。水を感じることなく、薄暗い道にいた。池のなかにも集落があるのか。家が並んでいる。人が歩いている。うねうねとした道を行くと、また大きな池があった。この池は明るい。水面がほんのりと輝いている。そしてその端から人が登って出て来る。足は自然に池のなかに向かった。明るい池のなかも明るく同じように集落や林や田んぼがある。ああ、先ほどの景色だ。間違いない。さっさとやって来た道を戻って早く家に帰ろう。