きらめくフライパン

今日、私は死んだ。そんな私を迎えに死神がやってきた。
その死神。エプロン姿で手には調理道具一式を持っていた。
「ちょっと失礼」
死神は私の中から魂のようなものを抜き取る。
「これ、貴方の中にある未練です。今からこれを調理していきますね」
まな板の上の未練。それを包丁で一口サイズに切り分け、フライパンでしっかり火を通す。手際の良さに感心する。
「未練のソテーです」
死神が出した料理を口にする。凄く美味しい。
「それは貴方が味わい深い人生を送ったから出せた味ですよ」
料理だけでなく口も上手い死神。料理はしっかり食べ切った。
満腹で心も満たされる。最後の晩餐がこんなにも素敵なものだとは知らなかった。ここが天国かと思ってしまう。
「残念ですが、貴方が行くのは地獄ですよ」
死神は私をフライパンに放り込むと一気に熱した。きらめくような早業だ。
地獄の業火で焼かれるも、未練のない私はそれを受け入れた。