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 何も観覧車や回転木馬があるのが遊園地ではないのだ。R大時代のオレにとっての遊園地は、原始林の遊歩道だった。樹林の中を縫うように伸びるその道を行くだけでワクワクしたし、間近に目撃する鳥や小動物はサファリパークそのものだ。草地の斜面を尻滑りしたり、枝ぶりの良い大木に登れば、絶景の展望台だったりする。
 ある日、ギターを手に遊歩道を進み、池脇の東屋でお得意の歌を弾き語りしていた。ふと背後に何かの気配を感じ、ゆっくりと振り向くと、黒帽で白いシャツ姿の青年が突っ立っていた。そいつは、いきなりこう言った
「鳥たちが迷惑しているじゃあないか!」
一瞬、呆気に取られつつも、向かっ腹が立ったので、こう切り返してやった。
「アンタに鳥の気持ちが分かるのか?喜んでいるかもしれんべや!」
 キョッ、キョッという鳴き声に気を取られ、視線を戻すと、もうそいつは消えていた。
ファンタジー
公開:24/03/22 12:41
更新:24/03/22 12:46

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