遠くの観覧車

病院の8階の窓辺で彼女はいつものように観覧車を眺めていた。
末期患者は上層階、その事をまだ知らない。

「ねえ夏には乗れるかな～♪」
「お前は元気なんだから、来月の誕生日には行けるんじゃね～？」
夏まで もたないと担当医から聞かされたばかりだった。

今日は疲れたので久々に家に戻った。

深夜にスマホが鳴った。
「急変し、手の施しようがなかった。」とつげられてしまった。
涙がほほをつたった。



コンコン！被告はゴーグルを取るように。
裁判長！被告はこの様に愛情がまだ残っています。
異議あり！VRで仮想の気持ちを表現しようとも、観覧車で殺害した事実は変わりありません。

主文、今生も有罪に処す。
来生も継続。


ぢぇ、また来生も観覧車になって、ず＝とあの女から見られ続けるのかよ＝。
もう勘弁してくれよ＝。


宇宙暦4771年から死刑は廃止されたが、死刑よりも過酷な刑が開発された。。。