シャンメリーゴーランド

「途中で飲んでくださいね〜」
スタッフの説明とともに、一本のシャンメリーが手渡される。
一見普通のメリーゴーランド。だが、途中でシャンメリーを飲むと炭酸の力で木馬が空へ飛んで、空中散歩ができるらしい。散歩を終えた木馬達が、空から降りてくる。

「ちょっとお客さん！持ち込みはダメって言ったじゃないですか!!」
見上げると、一頭の木馬がまだフラフラと宙を泳いでいる。乗っているのは男性だ。子供らしき男の子と母親の声がする。
「お父さ〜ん！早く降りてきてよ〜！」
「あんた！なんでビールなんて飲んでるの?!」
確かに、その手には缶ビールが。
「しょうがないなぁ。酔いが覚めるまではお子さんと二人で遊んできてください」
スタッフはそう声をかけると、カウボーイが持つようなひもを空へ投げた。
「どこかに行っては困りますからね。つながせてもらいます」
男性と木馬の姿は、まるでヘリウムガスの風船のようだった。