きらめくフライパン

私は子どもの頃、柔らかいフライパンをいつも握りしめていた。
柔らかいフライパンはフライパンなのに柔らかい。そして軽い。だから子どもに持たせるのに丁度いい。
柔らかいフライパンはフライパンとしても使える。そこがぬいぐるみと違う。私も子どもの頃、これで何度も料理を作った。
とはいえ柔らかいフライパン。その柔らかさゆえに重いものを入れると、へにょん…と曲がってしまう。だから柔らかいフライパンには軽いものしか入れられない。作れるのは卵焼きや目玉焼き。あとウィンナーくらいのものだ。ギョーザやシュウマイは重すぎる。
柔らかいフライパンは枕にも丁度いい。だけどしっかり洗わないと焦げたニオイが鼻につく。
しっかりきれいに洗い、寝かせたフライパンを枕に寝る私。
フライパンの見る夢を私も見る。キラキラに輝く料理の数々。
そんな夢を見せられるが故に、目を覚ますといつも柔らかいフライパンは私の涎できらめいていた。