きらめくフライパン

愛猫は祖母が愛用していたフライパンの中でよく寝ていた。
すぐに焦げ付く。重い。油のノリが悪い。そんな三拍子が揃ったフライパン。捨てようと思った矢先、愛猫が寝床にしてしまった。
フライパンの中で丸くなって眠る姿はまるでホットケーキ。茶虎の背中を見ているとつい涎が出てしまう。
すぅすぅと寝息を立てる度に膨らみ、へっこむその背中。食べちゃいたいくらいに可愛い。
大好きだったホットケーキ。だけどここ数年は食べていない。
ペットロス。愛猫が亡くなった時、私は食欲を失った。
愛猫はフライパンの中で息を引き取った。もう動く事のないその背中。冷たいホットケーキは涙の味しかしない。
愛猫が亡くなった夜、フライパンは柔らかな光を放ち、愛猫の亡骸と共に空へと飛んで行った。
祖母のいる天国に行ったのか、それとも温かさを求めて太陽の近くに行ったのか…どちらにしろ、もうあの日だまりに会えないと思うと今でも涙が零れる。