回転木馬やってます

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 小さな女の子を僕の背に乗せて、音楽と共に木馬と馬車が回り出す。女の子に笑顔で手を振っていた男女が、ふいに表情を暗くした。

「今日が家族として過ごす最後の日になるね」
「ああ」

 離婚でもするのか、男女の雰囲気は重々しい。

 女の子は夢中になって目を輝かせているけど、僕にはばっちり聞こえたぞ。

 全く、こんなところで重い話をしないでほしい。

 木馬の僕には、同じところをただ回るしかできないんだから。君たちの仲を修復することも、時間を止めることも、僕には出来ない。

「楽しかったねぇ、また来ようね」

 木馬が止まり、僕の背から降りた女の子は、パパとママに片方ずつ腕を絡ませる。

「そうだね」

 貼り付けたような笑顔で、男女は言った。大人は嘘つきだ。

 でも、やっぱり僕には、何も出来ない。
 子どもも大人も背に乗せて、少しでも長く君たちが笑顔でいられますようにと願うだけ。
その他
公開:24/03/20 11:01

春音優月

可愛いものと猫と創作が大好き。
執筆ジャンルは、恋愛(TL/BL/GL/TSF)、ファンタジー、青春、ヒューマンドラマ、など雑多。

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