きらめくフライパン

錬金術は台所で生まれた。台所にある調理器具で出来る手軽なものだ。
しゃちほこばる必要はない。料理を作るくらいの気持ちでいいんだ。
「いやいや。緊張するよ。今から作るの私達の婚約指輪だよ？絶対に失敗できないじゃん」
肩に力の入る彼女。まずはダイヤを錬成する為、炭素を慎重にフライパンへと入れていく。
僕は彼女の手を取ると、炭素を全部入れた。
怒る彼女を尻目にフライパンを軽く動かす。すると小粒のダイヤがいくつも生まれた。
これをちりばめた指輪の方が綺麗だと思わない？
「…確かに。そっちの方がいいかも」
錬金術には想像力が必要とされる。彼女はすぐにイメージ出来たようだ。
次に白金を錬成し、プラチナリングになるようフライパンを動かす。
錬金術師はフライパン一つあれば、好きな宝石を生み出せる。
そうして完成した、世界に二つとない僕らの婚約指輪。
それにかかった材料費は、きっちり僕の給料３か月分だった。