奇葬

私の生まれ育った村では赤ん坊が産まれる前に葬式を執り行う。
こうする事で『赤ん坊は死んだ』と死神に印象付ける。そうすると産まれてくる子どもが死神の恐怖に怯えなくてすむ。
村では昔、死産が多かったと聞かされている。決して裕福な村ではない。誰もが腹を空かせていた。
栄養失調によって奪われる命。痩せこけた体にくぼんだ眼。襤褸を纏う姿はまるで死神のように見えただろう。
ある日の事、流れ作業で弔いをしていた村人が、間違って産まれる前の赤子を弔った。
するとどうだ。その子は村で生まれながら、誰よりも健康に育ってはないか。
これが形だけの葬儀。産前葬の始まりだという。
産前葬のおかげで私も健康な体を手に入れた一人だ。
そんな私に今日、死後の結婚相手が決まったと連絡が入った。
村での死は死ではない。神様への婿入り、または嫁入りとされている。
死後婚文化に村では人の死に喜びこそすれ、悲しむ事は許されない。